狡い選択

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風呂から上がると、五十嵐が換気扇の下で煙草を吸っていた。 柚子の姿を見て慌てて火を消す。 見ると灰皿の上には4、5本の吸い殻があり、どうやら煙草を吸いながら色々考え込んでいたようだ。 柚子は恥ずかしさで思わずバスタオルで口元を隠した。 「あ、あの…。お風呂、先にいただきました……」 「…………いえ」 五十嵐は短く答え、小さく笑った。 「……………」 何とも言えない微妙な空気が漂ったが、五十嵐が不意にもたれていたガス台から身を起こした。 「柚子さん」 「………は、はい!」 柚子は弾かれたように顔を上げる。 五十嵐は柚子の前に立ち、じっと柚子の顔を見下ろした。 「………さっきの話、本気ですか?」 「……………」 柚子はゆっくり頷く。 「俺と付き合うってことも……、今夜、俺に初体験を貰ってくれって言ったことも…?」 再び柚子はコクンと頷く。 それを見た五十嵐の瞳が、かすかに揺らいだ。 五十嵐の指が、柚子の頬に触れる。 「俺も男だから、もちろんあなたを抱きたいと思うし、その申し出は願ったり叶ったりだけど……」 「……………」 「でも前のキス未遂の時みたいに、ヤケとか勢いとか…そんなことではあなたを抱きたくない」 「………そ、そんなこと……っ」 柚子が反論しようとすると、五十嵐の指が柚子の唇を軽く押さえた。  
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