狡い選択

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「俺が風呂に入ってる間に、もう一度ゆっくり考えてみてください。……本当に後悔しないか、本当に俺とそうなりたいのか……」 「……………」 「よく考えて、それでも今と同じ気持ちなら……」 そこで五十嵐は真っ直ぐに柚子の瞳を見据えた。 「今夜俺は、あなたを抱きます」 「……………!」 ドクンッと柚子の心臓が跳ね上がる。 言葉を無くしてただ瞬きを繰り返すと、五十嵐は少し笑って柚子から離れた。 「………じゃあ、風呂に入りますね」 そう言うと、脇に置いていた着替えを持って五十嵐は浴室へ向かった。 柚子は弾む胸を押さえ、五十嵐の背中を見送る。 その背中が扉の向こうへ消えるのを見届けてから、リビングへと戻った。 ポスンとベッドに腰を下ろし、バスタオルで髪を拭きながら、柚子は五十嵐の言葉を思い返していた。 『もう一度、よく考えてみてください』 『ヤケや勢いでは、あなたを抱きたくない』 (…………違う、そうじゃない) 柚子はそっと目を閉じる。 あの時は確かに、証に対する意地や当て付けで五十嵐とキスをしようとした。 けれど、今回は違う。 五十嵐の真っ直ぐな想いに応えたい。 その為に、自分の全てを五十嵐でいっぱいにしたいから。 ………100パーセントの気持ちで、五十嵐と向かい合いたいから。 勢いなんかじゃ、ない。 ……だから、後悔なんかしない。 私は今夜、五十嵐さんのものになる。  
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