1937人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※※※※※
ほんの少しの寝心地の悪さを覚えて、柚子はうっすらと目を開けた。
目の前に大きな手があり、ぎょっとする。
それが五十嵐の手だと気付くまでに、そんなに時間はかからなかった。
────昨夜、五十嵐に腕枕をされて眠った。
初めての経験に緊張してなかなか眠れなかったのだが、人肌の温かさに安心していつしか眠っていたらしい。
柚子はそろりと肩越しに五十嵐を振り返る。
柚子が動いた気配にも気付かず、五十嵐はよく眠っていた。
差し込む朝日に照らされたその寝顔は無防備で、年よりも若く見える。
(…………五十嵐さん………)
あのまま証が来なければ、自分は確実に五十嵐に抱かれていた訳で。
本来ならもっと、気恥ずかしいような面映ゆいような気持ちでこの寝顔を見つめていたのだろう。
壁にかけられた時計に目を向けると、7時を少し回ったところだった。
(…………どうしよう。先に起きて朝ごはん作ろうかな……)
だがその物音で五十嵐を起こしてしまいそうで、それも少し躊躇われる。
この一週間でかなり疲れていたようだし、日曜の朝ぐらいはゆっくり寝かせてあげたかった。
(五十嵐さんが起きてからでいいや。……私ももう少し寝よう……)
そう思った途端、あくびが込み上げてきた。
「ふぁあ……」
つい無防備に大きなあくびを漏らすと。
いつの間に起きていたのか、五十嵐が目を開けて柚子の顔を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!