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「……………っ!」
柚子は驚いてとっさにバッと両手で口を押さえた。
五十嵐はクスッと笑みを漏らす。
「大きな口……」
「やだ、ちょ……起きてたんなら言ってくださいよ!」
恥ずかしさで身をよじると、五十嵐は苦痛げに顔を歪ませた。
「や、あんま動かないで…。腕が痺れて……」
「え、あ……」
柚子は慌てて五十嵐の腕から頭を上げる。
五十嵐は苦笑いしながら、そろりと腕を動かした。
一晩中ろくに動かさずに腕枕をしていた為、相当痺れているようだった。
柚子はいたずらっぽく笑い、人差し指で五十嵐の腕をつつく。
「そんなに痺れてるんですか?」
「こら、駄目ですって!」
五十嵐はいたた、と言って顔をしかめる。
直後、痺れていないほうの手で柚子の脇腹をくすぐってきた。
「…………っ、や、あはは、や、ダメダメ…」
柚子は笑いながら身をよじる。
形勢逆転とばかりに五十嵐はニッと笑った。
「昨日ここが弱いってことを発見しましたからね」
「………やだ、五十嵐さん! ごめんなさい、もうしません!」
たまらず足をばたつかせながら謝ると、五十嵐はようやくくすぐるのをやめた。
柚子は目に涙を浮かべ、五十嵐の顔を見つめる。
五十嵐はクッと吹き出し、よしよしと柚子の頭を撫でた。
「…………おはよう」
顔を覗き込みながら言われ、柚子ははにかみながら頷いた。
「おはようございます」
照れたような柚子の顔を見て、五十嵐は柔らかく微笑んだ。
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