狡い選択

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結局、完全に目が覚めてしまった二人は二度寝を諦めて起きることにした。 何故か五十嵐の家には食パンだけはいつも常備されている。 柚子はそれでフレンチトーストを作った。 「……へぇ。家にあるものだけでこんなの作れるんだな……」 コタツに座ってしげしげとトーストを眺める五十嵐を見て、柚子は思わず笑ってしまう。 「五十嵐さん、そんなことばっかり言ってますね」 「いや、感心して……」 「簡単だから、覚えたらいつでも作れますよ?」 向かいに座った柚子に、五十嵐は微笑みかけた。 「そうですね。色々覚えていかないと駄目ですね。結婚したら奥さんのこと手伝ってあげたいし」 「……………」 いきなり結婚の二文字が出て、柚子は思わず黙り込んだ。 そんな柚子に気付き、五十嵐は慌てて手を振る。 「いや、あの、例え話で……深い意味はないですから」 「………は、はい」 「……………」 何だか微妙な空気になり、二人は気まずげに目を伏せた。 「……じゃあ、食べましょうか」 「あ、はい」 五十嵐の言葉を機に、二人は手を合わせる。 いただきます、と言ってから、柚子はトーストにかぶりついた。 少し火加減を間違えたせいで、焦げた味がする。 その苦さを噛み締めながら、柚子は先程の五十嵐の言葉を思い返した。 (…………結婚………) 自分はハタチで、五十嵐は26。 誠実な五十嵐のことだから、付き合うとなれば先の結婚のことまで見越しているだろう。  
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