狡い選択

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五十嵐のマンションの近くで買い物を終えた柚子は、スーパーから一歩出た所で足を止め、メモを眺めた。 (買い忘れたものはないよね……) あれから五十嵐と何度かメールのやり取りをし、土曜日の今日、約束の鍋を作ることになった。 五十嵐は午前中は仕事だが、午後からは家にいるという。 西日に逆らって歩きながら、柚子の胸はドキドキと弾んでいた。 (………どういうタイミングで、切り出そうかな……) 五十嵐と交際すると決めたこと。 今日、伝えようと決心した。 だが鍋を食べながらというのも何だかムードに欠ける気もする。 (シメのうどん食べた後にお付き合いしますって言うのもなー…) 考えながら柚子は思わず笑ってしまった。 (どうせなら、今度どこか連れてってくれるって言ってるし、その時まで待とうかな…) だが、早く五十嵐に伝えたいという思いもある。 思案しながら歩いていると、バッグの中で携帯が鳴った。 柚子は立ち止まり、携帯を取り出す。 (五十嵐さんかな……) そう思い携帯を開いた柚子は、ドキリとして立ちすくんだ。 見覚えのある、番号。 名前は消去したが、この10ヶ月で何度も目にしたその番号は、柚子の脳裏に焼き付いていた。 (………証……!) 動揺し、携帯を持つ手が震える。 今更、一体何の用事があって証が自分に電話をかけてくるのか……。  
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