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昨夜はお泊りだったので、今日は夕飯を食べてから早々に家に送り届けられた。
サイドブレーキを上げてから、五十嵐は柚子に向き直る。
「すみません、結局また映画に付き合わせて。……芸がないですよね」
「そんなことないですよ。今日の映画は私も見たかったやつだし」
「ああ、そういえば前はヨダレ垂らして爆睡でしたもんね」
「そ、それは忘れてくださいってば!」
赤くなった柚子を見て五十嵐はクスクス笑った。
「次はいつ会いますか」
「え、あ……」
柚子はしばらく考え込む。
「でも、あの…。今はお忙しいみたいだし、無理はなさらないでください。私は五十嵐さんの都合に合わせるので……」
「……………」
五十嵐は少し驚いた顔を見せた。
「付き合ってるんだから、少しぐらいは我が儘言ってほしいな」
「…………え」
柚子はドキリとして五十嵐の顔を見上げた。
五十嵐は淡く微笑む。
「で、でも、私の我が儘に付き合わせるのも悪いし……五十嵐さんが今大変なのはわかってますから……無理させて体壊すといけないし……」
「無理なんかじゃないですけどね。……ていうか、本音を言えば無理してでも毎日会いたい」
言いながら五十嵐は少し息をつき、顔だけをフロントガラスに向けた。
「……………温度差、かな」
「………え?」
よく聞き取れず、柚子は聞き返す。
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