星のない空の下で

32/40
前へ
/40ページ
次へ
「伯父上は……証から三千万を脅し取った恐喝の罪で、柚子さんのことを訴える準備を進めていたらしいんです」 「……………」 あまりにも突拍子もないことを言われ、柚子は一瞬唖然として五十嵐の顔を見つめた。 五十嵐の言葉の意味が、全くわからない。 自分が、証から。 三千万を脅し取った罪で。 訴えられる……? 「……え? 何……何ですか?」 混乱し、声を上擦らせると、五十嵐は何ともいえない表情を見せた。 「もちろん、そんなことはでっちあげです。何の根拠もない。ただ伯父上は、それを盾にして、証を脅したんです」 「……………」 「柚子さんを訴えられたくなかったら、柚子さんのことを諦めろ、と。……そして、本社に戻ってこい、と……」 あまりの衝撃に、柚子は大きく息を吸った。 絶句してしまい、しばらくは言葉も出ない。 (……え? どういうこと……?) 五十嵐の放った言葉を、ゆっくりと頭の中でかみ砕く。 つまり証は……。 柚子を訴えると父親に脅されて……。 そのせいで柚子を諦め、本社に戻る決意をした……と。 「……………そんなこと…っ!」 柚子は勢いよく五十嵐の顔を仰いだ。 「そんなバカバカしい嘘八百……どうして証は……」 「……………」 「契約書だってあるし、そんなの根も葉も無いでっちあげだって、証が一番わかってるはずじゃないですか!」  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2047人が本棚に入れています
本棚に追加