星のない空の下で

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(嘘つき……!) 人を本気で好きになったらエゴイストになると。 相手の幸せを一番に考えて、なんて人の好きになり方、まだわからないと言っていたのに。 何故、柚子の為に今まで築き上げてきたものを手放したりするのか。 あんなに痩せてやつれる程、辛い思いをしてまで何故。 (やめてよ……! 私の為にそんなことしないでよ……! 自分を犠牲にしてまで、守ってもらいたくなんかないよ……!) あんな形で別れを告げられ。 好きな人の犠牲の上に成り立った夢なんて、何の意味もない。 「………訴えられたって、よかったのに……。証が私の犠牲になるくらいなら、そっちのほうがよっぽど……」 しゃくりあげながら言うと、五十嵐はそれを治めようと優しく柚子の背中をさすった。 「それは証も同じです。自分が我慢することで愛しい人を守れるなら……やはり自分が犠牲になることを選んだでしょう」 「……………」 「証が好きだと自覚した今なら、柚子さんにもその気持ちがわかるんじゃないですか」 柚子はハッとする。 そしてそれは、五十嵐にも当て嵌まることなのだと……。 改めて、気付かされた。 (……そうだ、五十嵐さんだって……私と別れることを選んで、証への気持ちを気付かせてくれたんだ……) 二人の自分への熱い想いを今ひしひしと感じ、柚子は顔を覆って激しく嗚咽し始めた。  
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