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そんな優しい人を利用し、自分は傷付けてしまったのだ……。
「ホントに……ホントにごめんなさい、五十嵐さん……」
柚子は唇を噛んで深く俯く。
すると五十嵐は笑って、小さく息をついた。
「何故謝るんですか。別れを切り出したのは、僕ですよ?」
柚子は顔を上げる。
涙を堪え、くしゃくしゃの顔をしている柚子を見て五十嵐は優しく微笑んだ。
「フッたのは俺のほうなんだから、柚子さんが責任を感じることなんか何もないんですよ」
「……………!」
「だから帰って、俺への申し訳なさとかで泣いたりとか、絶対にしないでくださいね」
その言葉に、柚子の胸がぐっと熱くなる。
柚子が自分を責めて苦しまないように……。
五十嵐のほうから柚子をフッたのだと。
そう言うことで少しでも柚子の心を軽くしようとしてくれているのだと……。
最後の最後まで徹底して柚子を想うその優しさに。
とうとう堪え切れず、柚子は両手で顔を覆った。
「………ありがとう……ございます。私のこと……好きになってくれて……本当に……」
その時、柚子の頭にふわりと五十嵐の手が乗せられた。
驚いて顔を上げると、いつも通りの優しい笑顔が、柚子を見下ろしていた。
「恋人同士ではなくなったけれど……僕はいつでも柚子さんの味方ですから。………辛い時は遠慮せずに、いつでも僕を頼ってください」
言いながら、五十嵐は何度も何度も柚子の頭を撫でてくれた。
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