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キィ…キィ…とブランコの軋む音が、冷えた外気の中やたらと響く。
昔はこんなに鳴らなかったように思うのに。
ブランコが古くなったせいなのか、自分が大きくなったせいなのか……。
「……………」
落ち込んだ時に、必ず来るこの公園。
ここに来て無心にブランコを漕いでいれば、何故かいつも心が軽くなった。
父の思い出が染み付いているせいかもしれない。
だが、今日ここへ来て柚子が真っ先に思い浮かべたのは、五十嵐の顔だった。
(証と大喧嘩して家飛び出して……行く当てもなくてここに来ちゃったんだよね……)
あの秋の日、寒さに震えながら一人ブランコを漕いでいた。
悲しくてやり切れなくて、泣いてしまいそうだった時……。
五十嵐が、ここまで柚子を探して迎えに来てくれたのだ。
けれどもう、あの優しくて温かい人は、傍にはいない……。
(………私、ホントに一人ぼっちになっちゃったなぁ……)
苦笑を浮かべた直後、浮かんできた涙で視界が微かに滲んだ。
自分には結局、何も残らなかった。
愛した人も、愛してくれた人も。
けれどそれは、二人の心を弄んだ報いだ。
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