1858人が本棚に入れています
本棚に追加
『………どうしたの? 何かあったの?』
「……………」
『もしかして、外にいるの?』
矢継ぎ早に質問されたが、何から話していいかわからない。
グスッと鼻を啜り、頭の中で言葉を整理する。
「………お母さん、私……」
『何?』
「私……もうどうしていいか、わかんなくて……」
嗚咽で喉が詰まり、それ以上言葉が出て来なかった。
代わりに今まで我慢していた涙が、ボロボロと頬を伝っていく。
『泣いてたらわかんないわよ。今どこにいるの?』
「…………うっ」
『迎えに行ってあげるから。ちゃんと場所を言いなさい』
要領を得ないせいか口調は厳しかったが、言葉には心配の色が滲んでいた。
柚子はなんとか呼吸を整え、今自分がいる場所を奈緒子に告げた。
『わかったわ。すぐに行くから、待ってなさい。寒いから温かいものでも買って、痴漢に気をつけるのよ!』
まくし立てるようにそう言うと、奈緒子は電話を切った。
慌てたせいかどこから来るのかも言わず、あとどのぐらいで到着するのか見当も付かなかったが。
誰かが迎えに来てくれると思うと、不思議と柚子の心は温かくなった。
最初のコメントを投稿しよう!