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「そ。じゃあ、柚子のことよろしくね」
「……………!」
思いがけない奈緒子の台詞に、証は目を丸くする。
フリーズして立ち尽くしている証を見て、奈緒子は首を傾げた。
「あら、どうかした?」
「いえ、あの……」
証は戸惑いながら、首の後ろに手を置いた。
「俺のこと……憎んでないのかな、と思って……」
「…………まぁね」
奈緒子は嘆息しながら頬杖をつく。
「確かにあの成瀬 雄一郎と息子のあなたを切り離して考えられるほど、私も出来た人間じゃないからね。正直、柚子があなたに奴隷として買われたって聞いた時は腹わた煮え繰り返るぐらいムカついたけど」
「…………すみません」
いたたまれなくなりつい謝ると、奈緒子は相好を崩して証を見上げた。
「でもね、柚子の話ではよくしてもらってたって話だったし。何より、あなたは柚子を選んでくれたでしょ」
「……………」
「あなただったらいくらでも素敵な女の人寄ってくるでしょうに、ちゃんとあの子の本質を見て、好きになってくれた訳でしょ」
証は無言で頷く。
「親バカだとは思うけど、そういうのって単純に嬉しかったりするのよね。………それに」
奈緒子は微かに眉を下げ、声のトーンを落とした。
「惚れた女を守る為に全てを捨てるなんて、なかなか出来ないことよ。……あの成瀬の息子にしては見上げた根性だなって、悔しいけど感心した訳」
「……………」
「そこまで柚子のこと想ってくれてるのに、反対する理由もないでしょ」
あっけらかんと奈緒子はそう言ってのけた。
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