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「私、聞いたんだから。どっかの取引先の重役の娘と証の結婚が決まってるって……」
「……………」
証は呆気に取られたように大きな目で柚子の顔を見つめ返した。
話しながら、柚子の目に涙が浮かぶ。
「それも、お父さんから出された条件なんでしょ? 無理やり結婚させられそうなん……」
「……………ぶっ」
そこで証は堪え切れずに勢いよく吹き出してしまった。
さも可笑しそうに抱腹絶倒している証を、柚子は唖然と見つめる。
真剣に話をしているのに涙を流して笑っている証を見て、柚子はムカーッとして目を吊り上げた。
「何が可笑しいのよっ!!」
「………いや、わりぃ。だってお前……」
ようやく証は涙を拭いて身を起こした。
「お前、すげー誤解してるから」
「………誤解?」
「ああ。だってその取引先の娘って、お前のことだぜ?」
「……………」
柚子はポカンと証の顔に見入る。
「…………へ?」
「どこで聞いた話かしんねーけど、情報が中途半端なんだよ」
呆れたように言い、証は笑って柚子の鼻をつまんだ。
柚子は混乱してしまい、証の手を振り払うことも忘れてしまっていた。
(え…どういうこと? 取引先の娘と結婚させられそうで……その相手が、私……?)
「え、何、ごめん。さっぱりわかんないんだけど……」
「…………頭わりーな」
馬鹿にしたような証の言葉に、柚子はムッと証を睨みつけた。
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