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髪を掻き上げながら、マジマジと目の前の証を見つめる。
「…………あっきれた。あなた達……20年以上もそんな親子関係続けてきたの?」
「………………」
雄一郎は雄一郎で、産まれたばかりの証から母親を奪ったのは自分だと己を呵責し。
証は証で、自分を産んだ為に母親が亡くなり、そのせいで父から疎まれていると、勘違いしている。
(ちょっとコミュニケーション取って話をすれば済む話なのに……不器用もここまで来れば国宝級だわね……)
呆れて言葉も出ず、奈緒子は思わずうーんと低く唸って腕を組んだ。
「………まあ、あんな歪んだわかりにくい愛情じゃ、伝わらないのも当然か」
「…………え?」
証は怪訝そうに奈緒子を見下ろす。
奈緒子は溜息をついた後、苦笑して身を乗り出した。
「あなたね、本当はものすごーくお父さんに、溺愛されてるのよ」
「……………」
「ええ、そりゃあもう盲目的にね。あなたの為なら他人に対してどこまでも非情になれるくらい」
そこで奈緒子は蠱惑的にウインクをした。
「今度はカンじゃなくて、確信があるわよ?」
「……………」
証は薄気味悪そうに首をすくめる。
いきなりそんなことを言われても、何年も抱えていた思いはそう簡単には覆らないし、にわかには信じがたい。
何より、それこそ一体何の根拠があるというのか。
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