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「父が何か……言っていたのですか?」
半信半疑…というよりは殆ど信じていない様子の証に、奈緒子はいたずらっぽく笑いかけた。
「それは自分で聞いたほうがいいわね。あなた達に決定的に欠けてるのは、コミュニケーションよ。会話しなさい、会話」
「……………」
(…………会話………)
コミュニケーション……腹を割って……会話……。
何気ないことなのだろうが、物凄い無理難題を吹っ掛けられたような気になり、証は一気に憂鬱になった。
………だがそうすることで、もし万が一にでも柚子との未来に繋がるなら……。
「一ついいこと教えてあげるわ」
再び思考を破られ、証は我に返って奈緒子に目を向けた。
「………いいこと?」
「あなたと柚子との交際を反対してるお父さん自身が、実は親の反対を押し切っての大恋愛の末の結婚だったって話よ?」
「……………」
証は驚いて絶句する。
そんな話は一度も聞いたことがなかった。
「………まさか。家同士が決めた結婚だったと聞いてますが」
「んー。色々あったみたいよ? お母様、体が悪かったんでしょ? そのことが原因とか…。詳しくはわからないけどね」
「……………」
軽く動揺し、証は瞳をさまよわせる。
あの父が、親の反対を押し切って結婚した…?
成瀬グループを大きくすることしか頭にないような、あの父が?
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