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結局、部屋を追い出された柚子と証は、仕方なく奈緒子に指示された部屋に入った。
どうやら会議室らしく、ホワイトボードや長机が整然と並んでいる。
さっきまではお互いに興奮していたが、一定の間が空いたことで今は奇妙な空気が二人の間に漂っていた。
柚子は沈黙に耐え兼ねてそろりと証を窺い見る。
目が合うと、証はクッと吹き出した。
「ぶ。お前ひでぇ顔。超顔むくんでんじゃん。目も腫れてるし」
「…………な」
カアッと柚子の顔に血が上る。
恥ずかしくなり、とっさに両手で頬を押さえた。
一体、誰のせいで眠れない夜が続いていると思っているのか。
「何よ、そっちこそ。ひどい顔してるじゃない」
「俺が?」
「そうよ。そんなにやつれて、痩せちゃって……」
そこで何かが胸に込み上げ、柚子は言葉を詰まらせた。
じっと証の顔に見入る。
自分を見つめ返す証を見て、柚子は思わず飛び付いてしまいたい衝動に駆られた。
だがそれをぐっと堪え、柚子は浮かんできた涙を静かに拭った。
「…………どうして、言ってくれなかったの」
「……………」
「そんなにやつれるぐらいの辛い決断、どうして一人で勝手に決めちゃったのよ」
責めるように言うと、証は困ったように柚子から目を逸らした。
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