契約が終わる日

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食後、証はビールを片手に珍しくテレビを見ていた。 片付けを終えた柚子は、エプロンを外してそのまま浴室へ向かおうとした。 「……………おい」 リビングから証に呼び止められ、柚子は足を止めて振り返る。 証はソファーの背もたれに頬杖をつきながら、柚子を手招きした。 「ダッシュ」 そんなに距離もないのに何がダッシュだと心の中で思いながら、柚子は証の元に歩いていった。 「………何?」 「なんか、甘いもん食いたい」 「……………」 柚子はリビングの隅に置かれたチョコ入りの紙袋にチラッと目を向けた。 「………食べれば?」 「……………」 「たくさんあるじゃん。好きなの選べばいいでしょ」 証は背もたれの上で腕を組み、ジッと柚子の顔を見上げる。 「……つーかさ、お前はくれねーの?」 「……………」 まさか催促されるとは思わず、柚子は気まずげに目を逸らした。 「用意……してない」 すると証は露骨に驚いた顔を見せた。 「なんで?」 「なんでって言われても……」 「お前変わった奴だな。七夕やら冬至やらのイベントはやるくせに、バレンタインはやらねーんだ?」 「……………」 「ハタチの女とは思えねーな」 「………どうせ、会社でたくさん貰ってくると思ったから……」 言い訳がましく答えると、証は横を向いて小さく溜息をついた。  
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