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今日は何度となく交わしたキスだったが、今のキスはまたそのどれとも違うように感じた。
証は唇を離して一瞬柚子を見つめてから、はーっと溜息をついて柚子の体に折り重なった。
「……くっそ。明日休みだったらもっかいすんのに」
「バカ、何言ってんの。早く寝なきゃ」
やんわりと証の体を押し返すと、証はゴロンと横に転がった。
天井に顔を向け、目元を腕で覆う。
「俺、先に起きるけど、お前寝てていいから」
「え、でも……」
「いいよ、お前も疲れてるだろ。もう契約終わったんだし……俺に付き合うこと、ねーよ」
睡魔が押し寄せているのか、証の口調が徐々に途切れがちになってきた。
柚子は軽く半身を起こす。
「証、ちゃんと服着て寝ないと、風邪ひくよ」
「………んー……」
もう既にまどろんでいるのか、証は力の抜けた相槌を返した。
柚子は溜息をつき、証の肩を揺さぶる。
「証」
「…………」
だがとうとう証の返事が返ってこなくなり、代わりにスー…と深い寝息が聞こえてきた。
沈むように眠ってしまった証を、柚子は苦笑して見つめる。
(………疲れてるんだな……)
まだきっと、今の職場や仕事にもそんなに慣れてはいないはずで。
前より帰宅時間も遅く、この三週間、明らかに以前より疲れた顔で帰ってくることが多かった。
「……………」
柚子はそっと肩の上まで布団を引き上げてやる。
その時指先に伝った証の寝息が温かくて、柚子の胸がきゅうっと締め付けられた。
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