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ピピピ、と枕の下から籠ったアラーム音が聞こえ、証はうっすらと目を開けた。
朦朧とする意識の中で、枕の下をまさぐる。
(………やべ。早く切んねーと、橘が起きる……)
探り当てた携帯のアラームを、慌てて切る。
ホッとしたのも束の間、証は妙な違和感を覚えてゆっくりと首をもたげた。
「……………?」
虚ろに隣に目を向ける。
横で寝ているはずの柚子の姿がないことに気付き、証はガバッと半身を起こした。
「…………橘!?」
慌てて布団を捲りあげたが、柚子の姿はどこにもなかった。
証の頭が一気に覚醒する。
布団を跳ね退け、急いで足元にあった下着とズボンだけを穿いて部屋を飛び出した。
「……………!」
ドアを開けた瞬間、ふわっと味噌汁の匂いが鼻をついた。
それはいつものことで、証はホッと肩で息をつく。
(………なんだよ。起きなくていいっつったのに……)
だがダイニングまで来て、ようやく証はいつもと様子が違うことに気が付いた。
証が起きると、「おはよう」と言って笑顔を見せるはずの柚子が、どこにもいない。
ただ、朝食の用意がテーブルに並んでいるだけだった。
「……………っ」
証は身を翻して浴室へ向かった。
しかし、バスルームにもトイレにも、柚子がいる気配はなかった。
最後にリビングに戻った証は、テーブルの上に置かれた一枚の紙に気が付いた。
逸る気持ちでそれを手にし、サッと書かれた内容を一読する。
読み進めていくうちに、証の顔がみるみる険しくなっていった。
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