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(わりぃって……それだけ? 他に何か言うことない訳?)
五十嵐はああ言ったが、やはり柚子には証の考えていることがさっぱりわからない。
前はヒシヒシと証の愛情が伝わってきたが、自分が証を好きだと気付いた途端、そこにフィルターがかかったみたいにボンヤリと見えなくなってしまった。
そこで柚子はハッとする。
(もしかして証って追いかけたいタイプで……好きだって言われた途端に、私に興味なくなったとか…!?)
そう考え、柚子は両頬を押さえた。
(すごく有り得るわよ、それ。だってこいつ、ドSの権化だもん!!)
『おめーごときの分際で、よくも散々俺や陸のこと弄んでくれたよなぁ? 俺達がどんな思いをしたか、今からたっぷり味わわせてやるよ』
そう言って高らかに哄笑する証が脳内イメージで再生され、柚子の顔がザーッと青ざめた。
(嫌ーっ、もしかしてここからが証の本当の復讐の始まりっ!?)
「…………おい」
低い声で話しかけられ、柚子はビクッと体を揺らせた。
恐る恐る振り返ると、呆れたような顔で証が柚子を見下ろしていた。
「何一人でキョドってんだよ」
「……………」
泣きそうな顔で自分に視線をよこす柚子を見て、証はそっと心の中で嘆息した。
(………感情ダダ漏れなんだよ)
なんとなく柚子の考えていることはわかったが、証はあえて何も言わないことにした。
────今自分の本当の気持ちを伝えると、理性に歯止めがきかないことがわかっていたからだ。
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