契約が終わる日

4/38
前へ
/38ページ
次へ
(わりぃって……それだけ? 他に何か言うことない訳?) 五十嵐はああ言ったが、やはり柚子には証の考えていることがさっぱりわからない。 前はヒシヒシと証の愛情が伝わってきたが、自分が証を好きだと気付いた途端、そこにフィルターがかかったみたいにボンヤリと見えなくなってしまった。 そこで柚子はハッとする。 (もしかして証って追いかけたいタイプで……好きだって言われた途端に、私に興味なくなったとか…!?) そう考え、柚子は両頬を押さえた。 (すごく有り得るわよ、それ。だってこいつ、ドSの権化だもん!!) 『おめーごときの分際で、よくも散々俺や陸のこと弄んでくれたよなぁ? 俺達がどんな思いをしたか、今からたっぷり味わわせてやるよ』 そう言って高らかに哄笑する証が脳内イメージで再生され、柚子の顔がザーッと青ざめた。 (嫌ーっ、もしかしてここからが証の本当の復讐の始まりっ!?) 「…………おい」 低い声で話しかけられ、柚子はビクッと体を揺らせた。 恐る恐る振り返ると、呆れたような顔で証が柚子を見下ろしていた。 「何一人でキョドってんだよ」 「……………」 泣きそうな顔で自分に視線をよこす柚子を見て、証はそっと心の中で嘆息した。 (………感情ダダ漏れなんだよ) なんとなく柚子の考えていることはわかったが、証はあえて何も言わないことにした。 ────今自分の本当の気持ちを伝えると、理性に歯止めがきかないことがわかっていたからだ。  
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1936人が本棚に入れています
本棚に追加