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そう言うと脱いだシャツを柚子の頭に被せ、その上からワシャワシャと頭を掻き回した。
「………っ、何す……」
バッとシャツを取ると、証は柚子の肩に両腕をかけ、膝を折って柚子の顔を覗き込んだ。
「風呂入るけど、お前もくる?」
「……いっ、行かない!」
ムキになって断ると、証は笑って身を起こした。
ヒラヒラと手を振りながら、浴室へと歩いていく。
「んじゃ、風呂入ってくるわ」
「……………」
少し痩せた証の背中を見送りながら、柚子は大きく肩で息をついた。
(……なんだかんだで落ち込みかけたら、そうならないように空気は読んでくれるんだよね……。話のネタがエロばっかだけど……)
証の不器用な優しさが、今は少し切ない。
首に巻き付いたままの証のシャツに、柚子は思わず顔をうずめた。
(………証の匂いがする……)
以前よく抱きしめられた懐かしい感覚が蘇り、柚子は何故か泣きそうになってしまった。
────最後に抱きしめられたのは、いつだっただろう……。
そこで柚子はハッと我に返った。
(うわ、匂いとか嗅いで、私すごい変態っぽい!)
あたふたとシャツを引きはがし、柚子は慌てて証から受け取った服を片付け始めた。
最後にチョコレートの入った紙袋を前にし、複雑な気持ちになる。
(………本命とか、入ってたらどうしよう……)
そう考え、今になってチョコを用意しなかったことを、柚子は軽く後悔し始めていた。
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