時速200kmで逆走

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柚子はのろのろと証の顔を見上げた。 証の顔は至極真剣で、冗談を言っている様子は微塵もなかった。 それがかえって、柚子を激しく混乱させた。 「こ……これ…って……」 喘ぐようにそれだけ言い、問うように証の顔を見上げる。 すると証は力強く頷いた。 「期限は一生。途中解約なし」 「……………」 どこまでも真剣な顔で、証はそう言った。 柚子は頭が真っ白になり、ぼんやりと卓上の婚姻届を眺めた。 (………これは……プロポーズ……され、たの?) あまりの急展開に、思考が追いついてこない。 惚けたような顔をした柚子を見て、証は一度ふっと息を吐き出してから再び口を開いた。 「お前がどうせそういうことでグダグダ悩んでんだろーと思って、いかに俺が本気か伝える為に、これを書いた。……すぐに迎えに来たかったけど、親父に署名してもらうのに三日かかったから……」 柚子は証の顔を見つめた後、保証人の欄に書かれた雄一郎の名前に視線を落とした。 「………これ……お父さんは、ちゃんと納得されて署名したの?」 「ああ。まあ色々条件は出されたけど」 「………条……件?」 証はゆっくりと頷く。 「さすがに今はお互いにまだ若いから、すぐに提出するのは駄目だってよ。……んで5年後、今と同じ気持ちでお前と付き合えてて、今の気持ちが勢いだけじゃないってことを証明できたら……結婚認めるってさ」 「………5年……」 柚子がポツリと反芻すると、証はスッと目線を上げた。  
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