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柚子はのろのろと証の顔を見上げた。
証の顔は至極真剣で、冗談を言っている様子は微塵もなかった。
それがかえって、柚子を激しく混乱させた。
「こ……これ…って……」
喘ぐようにそれだけ言い、問うように証の顔を見上げる。
すると証は力強く頷いた。
「期限は一生。途中解約なし」
「……………」
どこまでも真剣な顔で、証はそう言った。
柚子は頭が真っ白になり、ぼんやりと卓上の婚姻届を眺めた。
(………これは……プロポーズ……され、たの?)
あまりの急展開に、思考が追いついてこない。
惚けたような顔をした柚子を見て、証は一度ふっと息を吐き出してから再び口を開いた。
「お前がどうせそういうことでグダグダ悩んでんだろーと思って、いかに俺が本気か伝える為に、これを書いた。……すぐに迎えに来たかったけど、親父に署名してもらうのに三日かかったから……」
柚子は証の顔を見つめた後、保証人の欄に書かれた雄一郎の名前に視線を落とした。
「………これ……お父さんは、ちゃんと納得されて署名したの?」
「ああ。まあ色々条件は出されたけど」
「………条……件?」
証はゆっくりと頷く。
「さすがに今はお互いにまだ若いから、すぐに提出するのは駄目だってよ。……んで5年後、今と同じ気持ちでお前と付き合えてて、今の気持ちが勢いだけじゃないってことを証明できたら……結婚認めるってさ」
「………5年……」
柚子がポツリと反芻すると、証はスッと目線を上げた。
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