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「長いと思うか…?」
「……………」
「5年も経てば、気持ち変わると思うか?」
柚子は何も答えられなかった。
変わらない、と言い切れる根拠はどこにもなかったからだ。
「……………」
細く開けた窓から、微かに風が吹き込んでカーテンを揺らした。
3月になったばかりの風はまだまだ冷たく、二人の間を駆け抜けていく。
「…………俺は、自信あるよ」
風が止むと同時にふいに証が呟き、柚子は伏せていた顔を上げた。
証は真っ直ぐに、射抜くように柚子の目を見つめていた。
「俺……今まで生きてきて、本気で誰かを好きになったの、二回だけだ」
その言葉に柚子はドキリとした。
(………二回……?)
問うような柚子の視線に答えるように、証は大きく頷いた。
「一回目は幼稚園の時。同じクラスの子で、泣き虫だった俺に喝入れてくれた、気の強い女の子」
「……………」
「二回目はハタチの時。色気なくて、単純で、無防備で。……でも、夢の為に必死で生きてた女」
証の声は力強かったが、どこか涙を含んだように震えがちだった。
柚子は胸を衝かれ、唇を噛み締める。
「今までそれこそたくさんの女と出会ったけど、俺が本気で好きになったのは橘 柚子だけだ」
きっぱりとそう言い切った後、証は少し切なげに笑った。
「俺は多分……お前しか好きになれないようにできてんだよ」
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