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揺るぎなく、力強い証の言葉を受けて、柚子の頬を涙が滑り落ちた。
証は逸らすことなく、真っ直ぐに柚子を見つめている。
自分の言葉に寸分の嘘もないことを、その強い瞳で証明しようとしているかに見えた。
「……………っ」
こんな言葉を証の口から聞けるとは思わず、たまらず柚子は俯いてぐいっと涙を拭った。
「………どう……して……」
膝の上でギュッと拳を握りしめる。
デニムに、涙の跡がいくつも染み込んでいた。
「どうして……だって私…犯罪者の娘だよ…?」
苦しげに呟いた柚子の言葉に、証はハッと顔を上げた。
柚子は俯いたまま、小さく拳を震わせていた。
「私なんかと……犯罪者の娘なんかと結婚したら、証苦労するだけだよ!」
「────違うだろ!」
証は手を伸ばし、柚子の手首をグッと掴んだ。
弾みで柚子は俯いていた顔を上げる。
その大きな瞳いっぱいに涙を湛えているのを見て、証は思わず柚子の体を引き寄せ強く抱きしめていた。
「………違うだろ。……お前は犯罪者の娘じゃねーだろ」
すると証の腕の中で柚子は激しく首を振った。
「事実がどうであれ、世間的に私は、談合事件を起こした会社の社長の娘なんだよ! しかも成瀬を巻き込んで! ……そんな女なんかと結婚したら、証はいい笑い者だよっ!」
「………っ、構わねーよ!」
柚子の体を引き離し、証は両手でその頬を包み込んだ。
間近に見た証の目にも涙が浮かんでいることに気付き、柚子は息を詰めた。
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