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「お前の父親が犯罪者じゃねーってこと、俺とお前がわかってたらそれでいいじゃねーか!」
「……………!」
柚子は目を見張って証の顔を見つめる。
証の胸元を強く握り、柚子は唇を噛んで再び俯いた。
「………証が普通の人だったら、それでいいかもしれないよ……でも、証は……成瀬グループの次期社長なんだよ?」
「……………」
「私達がそれでよくても、こんなネタ、周りが絶対ほっとかない」
柚子はキッと証の顔を振り仰ぐ。
「きっと証、悪く言われる! キャバ嬢やってた犯罪者の娘なんかと結婚したって、面白おかしくマスコミに書かれて、会社の評判だって落ちちゃうよっ!」
「落とさねーよ!」
自分の胸に置かれた柚子の手を、証は包み込むようにギュッと両手で握りしめた。
「ふざけんなよ、俺を誰だと思ってんだよ」
「……………」
「そんな風評なんかものともしねーぐらい、仕事で見返せばいいんだよ」
証の頬を伝った涙が、握り合った二人の手にポツリと落ちた。
証は涙目のまま、不敵にニッと笑った。
「元キャバ嬢? 犯罪者の娘?………上等じゃねーか」
「……………」
「そんな過去も気にせず、子供の頃からの純愛を貫いたって、逆に美談に変えてやるよ」
「……………っ」
柚子の視界に映る証の顔が、涙で滲んでぼやけてしまう。
嬉しくて、嬉しすぎて。
だからこそ、胸が苦しくて。
そして、たまらなく証が愛しいと、そう思った。
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