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堪え切れず溢れてきた涙を拭いながら、柚子は証の顔を見上げた。
込み上げる嗚咽を飲み込み、なんとか口を開く。
「私で……いいの?」
ようやく和らいだ柚子の表情と言葉に、逆に証の顔にサッと緊張が走った。
柚子の手を握りしめた手に、グッと力がこもる。
「……わ…私、証の奥さん、勤まるかな。……まだ保育士の資格も取れてないし……それに……」
「………っ、あーもー、めんどくせーな!」
そう言うと証は、ガッと柚子の両肩を掴み、間近で柚子の顔を覗き込んだ。
「イロイロ御託並べたけど、要するに俺はただお前に傍にいてほしいんだよ!」
「……………」
「家に帰ってお前の笑顔見たら、疲れなんか吹き飛ぶんだよっ!」
柚子の鼻先で証はそう叫んだ。
「そんな単純な理由で結婚したいって思ったんだよ、何か文句あんのか!?」
「……………っ」
柚子はブンブンと首を横に振る。
「…………文句、ない」
しゃくりあげながらそう答えると、証の顔に静かに安堵の色が広がった。
だが次の瞬間、その顔を真っ赤に染め、口元を拳で覆って照れ隠しのように横を向いた。
「……ったくお前はよー…。一から十まで全部言わなきゃなんねーのかよ……」
「…………ごめんなさい」
「んっとに一筋縄じゃ、いかねーよなぁ……」
溜息混じりに呟き、それでも証は直後に笑顔で柚子に向き直った。
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