時速200kmで逆走

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堪え切れず溢れてきた涙を拭いながら、柚子は証の顔を見上げた。 込み上げる嗚咽を飲み込み、なんとか口を開く。 「私で……いいの?」 ようやく和らいだ柚子の表情と言葉に、逆に証の顔にサッと緊張が走った。 柚子の手を握りしめた手に、グッと力がこもる。 「……わ…私、証の奥さん、勤まるかな。……まだ保育士の資格も取れてないし……それに……」 「………っ、あーもー、めんどくせーな!」 そう言うと証は、ガッと柚子の両肩を掴み、間近で柚子の顔を覗き込んだ。 「イロイロ御託並べたけど、要するに俺はただお前に傍にいてほしいんだよ!」 「……………」 「家に帰ってお前の笑顔見たら、疲れなんか吹き飛ぶんだよっ!」 柚子の鼻先で証はそう叫んだ。 「そんな単純な理由で結婚したいって思ったんだよ、何か文句あんのか!?」 「……………っ」 柚子はブンブンと首を横に振る。 「…………文句、ない」 しゃくりあげながらそう答えると、証の顔に静かに安堵の色が広がった。 だが次の瞬間、その顔を真っ赤に染め、口元を拳で覆って照れ隠しのように横を向いた。 「……ったくお前はよー…。一から十まで全部言わなきゃなんねーのかよ……」 「…………ごめんなさい」 「んっとに一筋縄じゃ、いかねーよなぁ……」 溜息混じりに呟き、それでも証は直後に笑顔で柚子に向き直った。  
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