時速200kmで逆走

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「新しい契約、俺と結ぶか?」 「…………っ」 そこで柚子は思い切り、証の体に飛びついた。 証はしっかりと、柚子の体を受け止める。 柚子は甘えるように、証の首に頬を擦り寄せた。 「………証……」 「………返事は?」 優しく頭を撫でられながら聞かれ、柚子はそっと体を離して証の顔を見上げた。 証は真剣な顔で柚子の顔を見つめていた。 柚子はゆっくりと頷く。 「…………契約、結ぶ」 言った後で、柚子は再び証の胸に飛び込んだ。 「証のお嫁さんになる……!」 証の胸にしがみつきながら、柚子は証と出会ってから起きた様々なことを、静かに思い返した。 キャバクラでの再会。 奴隷として雇われたあの日。 絶えない喧嘩。 緩やかに縮まる距離。 思いがけない過去。 胸が熱くなる告白。 突き付けられた別れの言葉。 五十嵐との別離。 自己嫌悪の嵐。 知らされた真実。 生まれて初めての告白。 想いを確かめあった、熱い夜。 ………そして、ずっと一緒にいたいという言葉と共にくれた、プロポーズ。 (………もういい、大丈夫。証とだったら、乗り越えていける) 柚子は強く強く、証の首に腕を回した。 何故あんなに悩んでいたのかわからなくなるほど、証の言葉は力強くて。 きっと本当に、この人とならどんな逆境も乗り越えられると……柚子はそう確信していた。  
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