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「『今までありがとう』だの『最後』だの意味ありげなこと書きやがって、行方でもくらますのかと思いきや、フッツーにここに戻ってきて生活してるしよ。一体何がしてーんだよテメーは、ああ?」
(………ひぃっ! 殺される!)
今まで証の怒りには何度も遭遇したが、ここまで命の危険を感じたことは未だかつてなかった。
うっすら笑みを浮かべているのが余計に怖い。
辛かったことを乗り越えてようやく結ばれた後の再会とはとても思えないような殺伐とした雰囲気だった。
柚子は恐怖で全身を震わせながら、怯えがちに口を開いた。
「………ゆ、行方……くらますつもりなんか……ないわよ……」
「……………」
ピクッと証の眉が動く。
それでも柚子の手首を押さえ込んでいる手の力は緩まなかった。
「………だったら、あの置き手紙はどういう意味なんだよ」
「あれは……だから……」
柚子は言葉を詰まらせる。
「と、とにかく…ちゃんと話す、から。こんな格好じゃ…無理、でしょ」
「……………」
「痛いから、手……離して」
証は疑わしげに、じっと柚子を睨み付けた。
「手、離した途端に逃げるんじゃねーだろーな」
「はあ? そんなことする訳ないでしょ」
「信用できるか。……いっつもすぐに俺の腕から摺り抜けていくくせに」
「……………」
証の口調からどこか不安のような色を感じ取り、柚子は何も言い返せずに黙り込んだ。
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