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「いっぱいいっぱい考えて……やっぱり私は、証にはふさわしくないって思った」
「……………」
「好きだけど……証のことすごく好きだけど、『好き』と『結婚』は違うんだってこと、嫌ってほどわかったから……」
「────だから黙って出て来たって言うのかよ」
証は静かに柚子の言葉を遮った。
まるで責めるように柚子の瞳を強く見返す。
「………じゃあなんで俺に抱かれた? 餞別のつもりかよ」
「そ、そんなんじゃない!」
柚子は勢いよく首を振る。
「証に抱かれたのは、証が好きだからだよ! あの時証に抱かれたいって…触れてほしいってそう思ったからだよ!」
「………………」
証は柚子が話し終わるのをじっと待った後で、少し吐息がちに口を開いた。
「俺は……お前を抱けて幸せだと思ったよ。でも……そう思ったのは俺だけなのか?」
「……………!」
柚子は再度首を横に振った。
「私も同じだよ! すごくすごく幸せだって思った。……だから……」
膝の上でぎゅっと手を握り、柚子は俯いて涙を堪えた。
「だから…決心が鈍りそうだったから……黙って出てきたの……」
証はハッとして柚子を見つめる。
「ホントはちゃんと挨拶して、お掃除して、普通に帰って来るつもりだった。……だけど、思いがけなくあんなことになって……」
「……………」
「証の寝顔見てたら、幸せで……幸せすぎて、このままずっと一緒にいたいって思ってしまいそうだったから……」
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