時速200kmで逆走

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「あのまま証の横で眠って、証の温もりを体が覚えてしまったら……きっと欲が出て、離れられなくなると思ったから……」 そこでとうとう柚子は顔を両手で覆ってしまった。 「………だから、決心が鈍らないうちにと思って、あのまま家を出たの……」 証が好きだから。 だからこそ、わかる。 自分が証に相応しくないことを。 だから、身を引く決意をした。 証の未来を邪魔したくなかったから。 もう二度と、自分が原因で証を苦しめたくなかったから……。 その時、柚子の目の前で証が軽く身じろぎした。 そうして、おもむろに口を開いた。 「今日は、お前を迎えに来た」 「……………」 柚子は覆っていた掌から顔を上げ、証を見つめる。 (……何これ……デジャヴュ?) 何だか以前、同じことを言われたような気が……。 そして確か、あの時は……。 嫌な予感に顔をしかめる柚子の前で、証は懐に手を入れ、何やらガサガサと紙を取り出した。 それをスッと柚子の前に差し出す。 「これ、新しい契約書。サインしろよ」 「……………なっ」 この期に及んでまだそんなことを言う証に、柚子は激しい憤りを感じた。 バン!と机を叩いて膝立ちになる。 「冗談じゃないわよ! また私に奴隷になれって言うのっ!?」 「…………バカ、早とちんな、よく見ろ」 言われて柚子は差し出された紙に訝しげに目を落とした。  
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