秋山 カズマ

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年功序列。昇給制度。役員報酬。 自分よりも能力の劣った豚どもが、地位やコネクションを使って能力以上の対価を得ている現状。 親が社長と言うだけで、何の苦もなく重役の椅子に座る腐ったシステム。 血の滲む努力で、生まれ持った能力を更に研磨しても、それでも社会は豚どもの糧としてしまう。 戦後の敗戦、焼け野原から日本を経済大国へと押し上げた先人たち、その対価も一部の豚が吸い上げて来た。 時間を金に変換するシステムは、その豚が築き上げたプログラム。 命を削る普遍的な社会のシステムに落胆する秋山には、命懸けのギャンブルに酷く興味をそそられた。 「そのゲーム・・ルールは?」 この時のルールとは裏工作、またはイカサマ。蛇と同業者から罵られた秋山の最も得意分野。 秋山の眼鏡の奥にはギラ付いた視線。峰岸は同属の発する眼光に寒気を覚えたが、口元は自然と綻んでいた。 「無い」 峰岸の返答を聞き、秋山は黒い封筒を自分の懐に仕舞い込んだ。 「峰岸さん、ちょっと電話して来て良いですか?」 「どうした?急用か?」 「ええ、休暇のダイビングをキャンセルしようと思いまして──」
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