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「終わりだ──…」
そう小さく呟いた男は、既にフィルターまで焦げ付いた煙草を無造作に床へと投げ捨てた。
威圧とも威厳とも取れる雰囲気を纏った男。
対照的にテーブルを挟んで向かい合っている男は、椅子から項垂れて生気すら感じる事が出来ない。彼の足元には数枚のカードが無造作に散らばっていた。
「おめでとうございます桂木様。これでステージ2クリアとなります」
龍の仮面から長い金髪を垂らした女は桂木にコートを差し出した。
桂木は視線を合わせるでもなく、何処か遠くを眺めながら差し出されたコートに腕を通した。
「俺は・・・降りる。もうこのゲームにも興が逸れたし滞在費は充分に稼いだだろ。
後は・・・ゆっくりこの船を喰い潰してやるよ」
桂木は黒のロングコートを翻すと、同時にテーブルに置かれたカードを掴み取って部屋を後にした。
「凄いな彼は、いったい今晩でいくら稼いだ?」
身を乗り出して液晶を覗き混む男。別室でゲームを観戦していた男が話し掛けると、隣に立つ虎の仮面の女は冷静に手元のタブレットを操作していた。
「ステージ2で終了したので、ざっと1億程ですね。
ただステージ2では歴代トップの成績です」
「ほう。たった2ゲームで億を掴んだのか、なかなか優秀だな」
「ですが、王にはまだまだ届きません。
優秀さと王に成るかは別です、直ぐに船から消えるかもしれません」
「ほう、君が優秀さを認めるのか・・・。
奴は来るかな?我々の椅子を奪いに・・・」
男は椅子に深く腰掛け直すと口元を不気味に吊り上げた。
「敵がまた1人・・・。
これだからギャンブルは辞められん」
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