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秋山はパソコンのエンターキーを強く叩き「よし」と呟き席を立った。
「ちょっと峰岸さんと話して来る。昇進したら奢るから期待せずに楽しみにしとけよ」
「ゴチになります!」
秋山は速見の姿に若かりし頃の自分と峰岸の姿を重ねて口元を綻ばせた。
「失礼します。秋山です」
秋山がノックの後に扉を開けると、峰岸は黒い光沢の有る椅子に腰掛けて何処かと電話の最中だった。
峰岸は電話を切らずに一瞬だけ秋山に視線を向けると、軽く手を挙げてそれを返事とした。
秋山はそれで峰岸の意図を悟り広い応接室のソファーに腰掛けて電話が終わるのを待つ。
昔から峰岸は重度のヘビースモーカーで有った為に、応接室にはガラスの灰皿が用意して有る。
普段なら来客に備えて応接室で従業員が喫煙する事は無いが、灰皿には既に吸殻が1つ押し潰して有った。
ソレは峰岸の愛用する銘柄で、わざわざ接客用の灰皿を使っている事は秋山自身の為に用意したのだと分かった。
秋山は清潔感の有る濃い青のスーツから煙草を取り出すと、一応峰岸に了承を得ようと視線で投げ掛ける。
峰岸は電話の相手と談笑を交えながらも秋山の問いに頷いて見せた。
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