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「──では失礼します」
峰岸が電話を終えたのは秋山が2本目の煙草に火を着けた後だった。
やはり峰岸も相手の後に通話を切る事は怠らない。
「いや、呼び出しといて悪かったな秋山」
「構いませんよ。珍しく峰岸さんからの呼び出しなんで俺もソワソワしてましたから、落ち着くには良い休憩に為りました」
「あはは、スマンな最近忙しくて構ってやれなかったな。何か飲むか?この後予定は無いんだろ」
峰岸は戸棚からウイスキーを取り出すと、グラスを2つ用意した。
「懐かしいですねソレ」
「ああ、安酒が俺達にはお似合いだ」
峰岸が用意したウイスキーは安物だったが、駆け出しの頃の秋山とはよく二人でお世話になった酒。苦い思い出の味と言える。
まだ酒を酌み交わすには早い時間にも思えたが、秋山にはこのあと予定している仕事も無い。
「酔いつぶれても職場だし構いませんよね?」
グラスを受け取り秋山がじゃれると、峰岸も昔と変わらずに笑ってくれる。
「ああ、明日は遅刻するなよ」
2人のグラスが重なると小気味良い音が応接室に響いた。
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