3人が本棚に入れています
本棚に追加
日がようやく傾き出して話が本筋に乗り出す頃には、部屋には空き瓶が転がっていた。
秋山に峰岸。どちらも酒に関しては驚異的に強いが、何と無く雰囲気が2人に酔いを回らせる。
「──で、本題だが秋山。お前もそろそろデスクワークに興味は無いか?」
「峰岸さんも知ってるでしょう。俺は営業しか出来ませんよ。管理職なんて・・・」
「だがな、俺も本社から五月蝿く言われてな。お前程の人材を平で飼い殺しには出来ないんだ。上はお前がヘッドハンティングされないかヒヤヒヤらしい」
秋山は飛び抜けて優秀だった。それは自身も謙遜せずに理解している。
その為に今までも何度も昇進の話は有ったが秋山はことごとくそれを断り続けていた。
理由は峰岸。秋山の唯一尊敬する先輩。彼の元で働く事は秋山にとって高給を受ける事よりも大切だった。
しかも秋山は優秀過ぎたが故に持ち込まれる話は他の支店長等、肩書きで峰岸と同じ扱い。
ソレが秋山は嫌だった。
自分の今が有るのは峰岸のお陰。その峰岸に追い付く事が秋山には裏切りに思えて我慢出来なかった。
「俺は峰岸さんの下で走り回ってるから安心して仕事に打ち込めるんです。上にはそう言って黙らせておいて下さいよ」
最初のコメントを投稿しよう!