第一章

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「今日は芹沢はんもいますえ。」 その瞬間、鈴さんの顔が曇った。 たった一瞬だったがそれを見逃さなかった。 芹沢…? 確か、壬生狼の暴れ者。 押し借りや毎日飲みに出掛けているという話を聞いたことがある。 「朔ちゃん、いきなりの正念場や…気張りよ。」 鈴さんは襖を開けた。 私も鈴さんに続いた。 「本日お相手させていただきます、鈴どす。」 「朔…どす…」 人数は六人。 おおよそ、一番上座に座っているのが芹沢さんだろう。 鈴さんは早速、お酌しに回った。 私はどうしていいか分からず、止まってしまった。 「そこの女、此方へ来い。」 私のことを呼んだのは鈴さんに注意された芹沢さんだった。
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