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「大丈夫だよ。僕にとって朔は大切な存在なんだ。あんな幕府の犬たちに傷つけられるのは有り得ないから。」
人気がない場所で稔兄は狐の面を外した。
そして、私に着替えをくれた。
私は空き家に入ってすぐに着替えた。
鈴さんは無事だろうか…
私もあんなに声を大きく出したのはいつ以来だろう…
初めてかもしれない。
「稔兄、ありがと…」
「ううん。帰ろうか。」
稔兄は当たり前のように私の手を引いて歩き出した。
その時だった。
稔兄が握った手を見た。
「朔、無理したの?」
あ…
忘れてた…
あまりの怒りに痛みを忘れてしまっていたのだ。
「稔兄、ごめんなさい…手、汚しちゃった…ね…」
「そんなことより、手当てが先だよ。あと少しで藩邸に着くから我慢出来る?」
私は頷いた。
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