第一章

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「大丈夫だよ。僕にとって朔は大切な存在なんだ。あんな幕府の犬たちに傷つけられるのは有り得ないから。」 人気がない場所で稔兄は狐の面を外した。 そして、私に着替えをくれた。 私は空き家に入ってすぐに着替えた。 鈴さんは無事だろうか… 私もあんなに声を大きく出したのはいつ以来だろう… 初めてかもしれない。 「稔兄、ありがと…」 「ううん。帰ろうか。」 稔兄は当たり前のように私の手を引いて歩き出した。 その時だった。 稔兄が握った手を見た。 「朔、無理したの?」 あ… 忘れてた… あまりの怒りに痛みを忘れてしまっていたのだ。 「稔兄、ごめんなさい…手、汚しちゃった…ね…」 「そんなことより、手当てが先だよ。あと少しで藩邸に着くから我慢出来る?」 私は頷いた。
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