第一章

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脳裏に浮かぶのはあの日。 怖い… 私は買った物を置いて走り出した。 「あ、ちょっと!」 壬生狼の人も走ってくる。 私に刀は使えない。 相手は刀を持っている。 追いつかれる前に… でも、このまま藩邸に帰る訳には… 皆に迷惑かけちゃう… まして、壬生狼… 「どうして、逃げるんですか!待って下さいよ!」 私は後ろを振り向かずただ走り続けた。 嫌だ… 追いつかれたくない… 無我夢中だった。 小さな路地を抜けて、人通りの少ないところを通って… 着いた先は行き止まり。 私は初めて後ろを振り返った。 「ハァ、ハァ…中々、速いですね。私も鬼ごっこは得意…なんです…けど…ね…」 男の人は息を切らしながら私の方を見る。
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