第一章

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「ハァ、ハァ…」 「朔!遅いから心配したんだよ。」 稔兄が焦った表情で私の方に寄ってきた。 私は息を切らしたままで言葉を発することは出来なかった。 「どうしたの?何があったの…?」 稔兄は私の顔を覗きこむ。 優しく笑うんだ。 私はその瞬間、崩れ落ちた。 安心したんだ。 「朔!?大丈夫?」 「大…丈夫…壬生狼…の人に追いかけ…られたの…」 私の身体は震えたまま。 下を向き、ギュッと手を握った。 稔兄はそっと手を包み込んでくれた。 温かくて大きな手。 でも、手には豆だらけ。 それだけ刀を握っている証拠だった。 「朔、中に行こう。お茶持ってくるよ。」 稔兄は私をゆっくり立たせて中に連れて行った。
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