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「ハァ、ハァ…」
「朔!遅いから心配したんだよ。」
稔兄が焦った表情で私の方に寄ってきた。
私は息を切らしたままで言葉を発することは出来なかった。
「どうしたの?何があったの…?」
稔兄は私の顔を覗きこむ。
優しく笑うんだ。
私はその瞬間、崩れ落ちた。
安心したんだ。
「朔!?大丈夫?」
「大…丈夫…壬生狼…の人に追いかけ…られたの…」
私の身体は震えたまま。
下を向き、ギュッと手を握った。
稔兄はそっと手を包み込んでくれた。
温かくて大きな手。
でも、手には豆だらけ。
それだけ刀を握っている証拠だった。
「朔、中に行こう。お茶持ってくるよ。」
稔兄は私をゆっくり立たせて中に連れて行った。
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