第一章

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「それにしても、朔がボーッとしているなんて珍しいね。あの事思い出してたの?」 あの事… 私は頷いた。 忘れられる筈がない。 あの羽織。 左目が疼く… 「その話はもうやめにしましょう。朔、高杉を起こしてあげて下さい。」 私は頷いて、晋兄を起こしに行った。 でも、面白がって稔兄がついて来る。 何をしようというのだろうか… 「晋兄…起きて…」 私は揺さぶった。 でも、目を覚ます気配はない。 「朔、それじゃ起きないよ。こうしなきゃ…」 稔兄は足で思いっきり晋兄のお腹を踏んだ。 稔兄って、晋兄に何か恨みを持っていたっけ…? 「ぐぇ!て、てめぇ、稔麿!」 稔兄は知らん顔で桂さんのもとに戻って行く。
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