08:野良猫は怯まない

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「このクソがきゃあ!」 すぐさま起き上がったアッシュさんが横薙ぎに日本刀を払った。だがそれさえもヘイムダルは軽々とかわす。 さすがにアッシュさんもタフだな。 僕が今のレベルで1000を超えるダメージなんて食らったら…、わずかその一撃でHPの半分近くを奪われてしまうところだ。 よし。 ひとまず、この場はこのまま押し切れるか? だがそう思ったのも束の間、好転しかけていたように思われた事態が、この女の登場で再び振り出しへと戻された。 「アッシュ!あいや~、無事アルか?」 あの青いチャイナドレスは…、インチキチャイニーズ、シャオか! あぁもう、こんな時に! 「おう、えぇ時に来よったな、シャオ。この目隠し野郎どついたれ!」 「あいや、アチキに任せるね~。中国四千年の歴史に…、今こそ終止符を打つアル!」 この中華娘、またしてもおかしなことを言ってるけど…、状況が状況だけに笑えない。 「あちょー!」 胡散臭い掛け声とともに、体勢を低くしたシャオが地を滑るようにヘイムダルの眼前に迫り、肩口から全身を叩きつける。 いわゆる鉄山靠というヤツだ。 バーチャファイターだか何だか、昔流行った格闘ゲームのキャラが使っていたのを見たことがある。 『暗殺者』のジョブスキルではない。 たぶん、課金アイテムであるチャイナドレスに付随した特殊なスキルだろう。 これが、見事にヘイムダルにヒットした。 もしかしたら、ヘイムダルは敵の攻撃を全てかわすことができるんじゃないかとさえ思っていた矢先の出来事だった。 くそっ。 課金者優遇にも程があるだろ、運営め! だがヘイムダルも怯まない。 裏拳を繰り出しつつ体を回転させ、そのままの勢いでミドルキックを放つ。 「あいや~。この目隠し兄さん、なかなか強いデスね~」 吹き飛ばされつつも、なおファイティングポーズを取るシャオ。 まさに一進一退の攻防…、って、いい勝負してもらってても困るんですが、ヘイムダルさん…? だが、状況はそこからさらに悪化した。 「アッシュさん」 「お待たせ」 「しました」 「ね」 少し離れた場所で事態を見守っていたアルさんの後ろに、まったく同じ格好をした暗殺者が二人。 ハマの狂犬三兄弟。 アル、エル、ココ。 その三人が、出揃った。 「これでこっちの役者は揃うたな。ほないくで、反撃開始や」 アッシュさんはそう言って、指の骨をボキボキと鳴らした。
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