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サイファ…?
サイファ、ちゃん…?
城下町への強制送還カウントダウンが始まる中、僕はカメラ視点を左右に動かして辺りの様子を窺う。
しかし、銀髪白翼のあの華奢な少女の姿はない。
床一面に広がっていた魔方陣ごとケルベロスが消え去った後の大広間の入り口と最奥に、僕と例の白いドレスの女性がいるだけだった。
あの人がサイファちゃんか?
いや、どう見ても違うよな…。
高く結い上げた金髪に純白のドレス。
ずいぶん距離が離れているとはいえ、あのサイファちゃんを連想させるような外見上の共通点は皆無と言っていい。
でも、名前が同じって…、確かあり得なかったよな?
サキさんが前に言ってたもん。人と同じユーザーネームは登録できない、って。
さっきのセリフを発したのは、状況から考えてあのドレスの女性だとしか思えない。
だとしたら?
答えは、存外に明確だ。
あのドレスの女性はこのゲームの“登場人物”。
つまり、このマップ上にプログラムとして配置されたNPC(ノンプレイヤーキャラクター)。
サイファちゃんはきっと、自分につけた名前がたまたまこの登場人物と被っただけなんだ!
そうとしか考えられないっしょ!
じゃあ、アレか?
この塔に侵入したのも、ケルベロスが現れたのも、そのケルベロスに負けたのも…。
すべてプログラムされた“ストーリーイベント”だったってことか!?
なんだよ、真剣に戦って損したよ!あらかじめ負けるように仕向けられてたんじゃん!
まぁ…、いなばちゃんのダイナマイト桃尻を拝めただけ、良しとするけどさ。
あぁ、もっとじっくりと目に焼きつけておけばよかった…。
「答えるがいい、愚か者よ。意識があるのかないのか…、この私が訊ねておるのだぞ?」
再び“シャウト”で、そのサイファというキャラクターのやや時代がかったセリフがウインドウに流れる。
これも、ストーリーを進めるための決められた“セリフ”なんだろうけど…、なんかヘンだな?
ケルベロスにやられて、気絶することで進むストーリーなんでしょ?
意識なんてあるワケないじゃん。気絶してんだから。
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