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「でもさ、ジキルくん」
軽く肩をすくめて、サキさんはコメントを続けた。
「幸運の蜘蛛とか、塔とか…、そんなん聞いたこともないんだぬ~。アレじゃない?ほら、ジキルくん、アレ見てたんじゃない?なんだっけ…、オイルショック??」
お、オイルショック?
「あ、オイルショックじゃない!白昼夢だった!」
全然違うし!!
でも、夢なんかじゃなかったぞ?はっきり覚えてるもん。
あの蜘蛛も、
見上げた白銀の塔も、
広いエントランスも、
ケルベロスのド迫力も、
いなばちゃんのお尻も、
そして、
遠目に見た、あのサイファという名のドレスを着た金髪の女性も…。
何もかも、ちゃんと記憶に残ってる。
夢なんかじゃ、ない。
「じゃあ、ジキルくん。力を与えられた…って、それはどんな力だったのかぬ?」
えと、それは…。
なんなんでしょ…?
もごもごと言い訳じみた弁解をする僕に、サキさんは軽くウィンクを飛ばし、手を振った。
「マイページに戻ってみたら、案外なにかプレゼントが届いてるかもだぬ!確認してみるといいよ!まぁ、ジキルくんの白昼夢じゃなかったら、の話だけどぬぇ!」
あ、なるほど。
確かにイベントクリア報酬なら、マイページのプレゼントボックスに届くハズだよな…。
わかりました、そうします!
サキさんはホントにもうログアウトするんですか?
「うん!用事もあるし、にっくき鶏つくねもいないしぬぇ!」
あ、サキさん。
なんだかんだ言って、つくねさんのことが好きなんですね?
「ちっ、ちっがうんだぬっ!今むしゃくしゃしてるから、八つ当たりできる相手が欲しかっただけなんだぬ!!じゃジキルくん、またあとでっ!」
あぁ、つくねさん。
とても残念なお知らせがあります…。
白い光に包まれログアウトを開始したサキさんを見送りつつ、僕は心でつぶやいた。
サキさんのほうが…、
デレが、上手です。
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