01:悪夢は終わらない

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「…いってぇな……!」 肩口から思いきり床に打ちつけられた僕は、来ていたTシャツについた埃を手で払う。 誰にも見られてないのが幸い。でも、階段でコケるなんて小学校時代以来の大失態だ。 僕は顔をしかめつつ、コケた元凶でもあるケータイの中の銀髪の少女を睨みつけた。 マイページがどこかわからないだって…? そんなバカな話があるか? ゲームにログインしたら、誰だって自動的にマイページへジャンプするハズだ。 そこから冒険に出たり、ジョブや装備の変更をしたりするワケなんだから…。 「とりあえず あなたとおなじギルド?へのかにゅうは ごしゅじんさまに おねがいして おきますね」 僕が階段でずっこけているだなんて知る由もなく、サイファちゃんはそう続けてきた。 わからない。 この子の言っていることすべてがわからない。 だが、極めつけはこの後のやり取りだった。 「ところで ジキルさんは バトルイベント?とうぎじょう?にでるんですか?」 ん? 明後日から始まる、ギルド対ギルドのバトルイベントのこと? もちろん、出るよ。 だって、わざわざそのために入りたくもないギルドに入ったんだから! 「そう ですか」 あら? なんか残念そうなリアクションだね…。 サイファちゃんはああいう、プレイヤー同士のバトルとかってあまり好きじゃないのかな? 「バトルとか は よく わかりません でも きをつけてください ごしゅじんさまが こういってましたから」 そこで少しだけ、次のコメントまでの間が空く。 そしてー… 「こんどばかりは だれかが しぬかもしれない と」 銀髪の少女は、 踊り場でひとりしゃがみ込んだままの僕に、 無表情でそう告げた。
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