壱 -高校二年生はお忙しい-

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「しっかし……んなのやってのける辺り、やっぱ十段だわ」 「いや、九段でも可能なレベルだぜあれは」 「八段の俺には無理だな」 「ま、頑張れよ。応援だけしてやるから」 「薄っぺらいなぁおい」 そんなやり取りをしながら俺達は歩く。このペースなら学校に着く頃には八時前後だろう。 ……そういや、あの女子生徒はなんで走って学校に行ったんだ?まだ七時四十分だから、一時間も余裕があるのに。 ……ま、いいか。考え方なんて十人十色だ。きっと学校に一番乗りしてクラス替えのボード見て教室に入って知らん奴らにドヤ顔かましたかったんだろう。 俺達の国は科学と魔法の二つが効率よく発達した「魔科学」の先進国だ。魔力の原素を魔術的に回収し、科学的に放出する……と言うのが基本で、例えば扇風機は風の魔力を集め、風を出す口から科学の力で冷やした風を出している。それくらい便利な代物だ。 テレビでも、「どちらかのない世界はどうなっているか」という特集をしていた。答えは、「今の世界と大して変わらないが、今ほど豊かにはなれない」というものだった。 例えば魔法だけだと、今ある文明の利器は製造不可能だし、科学だけだと自給自足は困難であり、電気や水を使うのにある供給のパイプラインが必要で、今以上に生活に金がかかる…との事だ。
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