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「涌井君がそんなにしゃべるキャラだと思わなかったよ」  放課後の廊下を委員会終わりの航平は相澤麻衣と教室に向かっていた。  航平と別の小学校だった麻衣とは、1年生から揃ってクラス委員である。麻衣は立候補、男子は候補者がおらず「女子が出席番号1番だから男子は最後の涌井」に決まったのだ。今年も麻衣は立候補。同じパターンで航平は持ち上げられてしまったのだ。 押されると断るのが面倒なのでつい首を縦に振ってしまうのは性分だ。 「やっぱり鈴井さんと仲がいいんだね」 「いや、あれはしゃべってるというか・・・ツッコミ・・・」 「去年なんかあまりに涌井君が静かだからどうやって委員会やり過ごそうかと思ったんだよ」  成績優秀、美術部副部長も勤める責任感の強い麻衣は声もハリがある。のほんとした口数の少ない男子の声はどうもかき消され気味である。  教室につくと、黒板の上の時計は五時半を指している。 「あと30分かー、部活、準備したら終わっちゃうな」  麻衣が面倒そうにリュックにファイルをしまう。ふと思いついたように、教室を出ようとしていたのっぽの影を見る。 「・・・ねえ、鈴井さんって部活入らないの?」 「え?さあ」  呼び止められた航平は視線を泳がせて答える。  そういえば転校してから部活の話をしていない。見学している様子もないし。 「前の学校で何部だったか知ってる?」 「・・・・しらね・・・」 「もー幼馴染のくせに」  ぶつくさいいながら麻衣は教室の電気を消す。夏が間もない廊下はまだ電気が点灯していない為日の当たらない教室は一気に暗くなる。 「美術部に勧誘しようかな」 「自分できいてみてくれ」  麻衣が前扉から出るのを確認して後ろ扉からでた航平は扉を閉めると「じゃ」と手を振って体育館に向かった。  そういえば、前の中学校の話ってあんまり聞かないな・・・友達の話も聞いたことないし。あいつ、何部だったんろう?  ぼんやり考えてたら体育館につくころには部活時間はあと10分ほどだった。
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