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「ふーん。まあ、蘭の親父さんならイケメン占い師で人気上がりそうだな」
「いや、メイクとかするよ」
「・・・・・」
そこはイケメンのがいいだろ、という突っ込みと共にメイクの真相にも触れるのをやめた。
「まあ、大変そうだな・・・。そうだ、蘭部活に入れば?相澤が美術部に誘いたがってたぞ」
ふと、麻衣の話を思い出す。
「んー、うん」
少しの間があり気のない返事が返ってきた。
「いつも俺ん家くるわけにもいかないだろ」
蘭は犬達をクッションのように抱きかかえむー、と考え込んでいたかと思うと、ムクリと起き上がり
「・・・航ちゃん、今日はよくしゃべるね」
乱暴につぶやくと蘭はコーギーを航平の顔によいしょと押し付けた。
「(だれのせいだ・・・)もう、おまえ帰れ」
しっしとされてちょっと寂しそうに見えたが蘭は航ちゃんのケチケーチと笑いながら犬と出て行った。
下から母親が「いつでもいらっしゃい」と送り出している声が聞こえる。
実際、一人で父親の帰りを待つ幼馴染を心配していなくはないが、自分はやはり最近しゃべりすぎていると航平は思うのだ。中学校に入ってから静かな放課後が当たり前になっていたからだ。
運動不足のせいか夢のせいか、ややぐったりした気分で、やれやれ、と重い腰を上げてジャージに着替える。開かれた窓から隣の家に明かりがついたのを確認すると静かにカーテンを閉じた。
朝はさわやかだった空気もだいぶ湿気を帯びていた。明日は雨かもしれない。
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