第一章

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連日の猛暑、茹だるような暑さ。牧瀬に殴られ痛む腹を抱えながら部屋で踞っていた。 ドタドタと廊下で人の足音がし、部屋のドアが開いた。児童指導員の立花賢吾(たちばなけんご)三十歳が、ドアを開いた。 「鈴木、礼美ちゃんを見なかったか?」 「礼美ちゃん?鈴木一郎と一緒じゃないの?」 「いなくなったんだ。鈴木は一人でずっとここにいたのか?」 俺はさっきまで牧瀬と川上にトイレで殴られていたんだ。 「はい、一人でいました」 「そうか。もし見掛けたら教えてくれ」 その日、礼美ちゃんは施設から忽然と姿を消した。幼女誘拐、事件、事故、警察官が施設に入り入所者全員に事情聴取をし、野村礼美ちゃん行方不明のニュースが連日テレビで流れた。 小さな町の電柱には、礼美ちゃんの写真が掲載されたポスターが貼られ、警察は躍起になって犯人を捜した。
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