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彼が死んだ?
まじで?
俺はついている。全て計画通りだ。俺は今日から生まれ変わる。俺は鈴木一郎、アイツになるんだ。
「フッ……フフッ……」
思わず笑みが漏れる。
「鈴木さん?どうかされましたか?」
俺は看護師の問いに首を振る。
全身は痛むが、心は晴れている。
「まだ無理はなさらないで下さいね。大手術だったので、暫く集中治療室での治療となります」
大手術……。
もう一人の鈴木一郎と判別出来ないほどのダメージを顔に受けたのか?
集中治療室の壁にはカレンダーがぶら下がっている。俺達がこの町に来たのは、二千十三年八月二日。今日は八月二十日?俺はそんなにも長い間眠っていたのか?
まあいい。
傷はそのうち治るだろう。
手に入れた金のことを考えれば、こんな傷はどうってことはない。
俺は鈴木一郎を死に至らしめ、まんまと彼の人生を奪うことに成功したんだ。
もう貧乏とはおさらばだ。
安堵した俺は、遠い過去の記憶を思い出しながら、深い眠りについた。
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